事なきを得た貴景勝(大関昇進)

平成31年3月場所後、無事大関昇進が決まった貴景勝関。

ただ、昇進直前成績が

H30⑨ 小結 9‐6

H30⑪ 小結 13‐2◎

H31① 関脇 11‐4

◎優勝、〇同点、△準優勝

この時点で三役3場所で33勝。優勝が含まれていることもあり、H31①14日目に11勝すれば昇進のアナウンスでも十分。実際は千秋楽で勝てば昇進(34勝目の要求)のアナウンス。恐らく、多分にムードに流されている気がしますが、過去事例も少なからず影響している気もします。

H31③ 関脇 10‐5

これで無事昇進。

過去三役3場所で33勝以上の成績を残して最終的に大関に昇進できなかった力士は存在せず、ここで9勝ならその可能性が残ったので、「事なきを得た」という表現がぴったりな気がします。

 

事例1 把瑠都

H21⑨ 小結 12‐3

H21⑪ 関脇 9‐6

H22① 関脇 12‐3△

この時点で3場所33勝。H22①千秋楽でも勝てば昇進のアナウンスなし。見送り。

H22③ 関脇 14‐1〇

で昇進。

類似点は見送り時の3場所成績に1桁場所が含まれている点。

違う点は2桁が連続していない事、優勝がない事。これを踏まえると貴景勝の見送り時の成績の方が優れている。

この時に思ったのが「33勝の見送り例ができてしまった」です。相撲内容、対上位成績等考えることはあるとは思いますが、大関昇進は本割成績が第一だと思います。

 

事例2 霧島

H1⑪ 小結 10‐5

H2① 小結 11‐4

H2③ 関脇 13‐2〇

一見問題がないように見える成績。H2③のノルマは内外(協会・マスコミ)共に場所前は12勝。14日目12勝目を挙げた時点で昇進決定、のはずが「2場所前の小結が引っかかる。もう1番欲しい(13勝の要求)」の審判部長談話。こう言ってしまうと最早ノルマは34勝となって、標準的な33勝(10‐11‐12)が見送られる可能性があった。実際は千秋楽に勝って13勝目を挙げたことで無事昇進。特にこの時は完全無欠(3場所三役で全て2桁)の33勝が見送られる可能性があったので、一番やばかったと思っています。

類似点は33勝を達成した時、三役3場所のうち2場所が小結。小結勝ち越し後に関脇空席なしでの小結据え置き。

違う点は小結据え置き時の9勝と10勝。3場所全て2桁

 

他にも探せばあるのかもしれませんが、問答無用で思い出した2例を紹介しています。

 

【三役で2場所24勝を見送る危険】

24勝のパターンは9‐15、10‐14、11‐13、12‐12、13‐11、14‐10、15‐9

上記を満たしたうえで、3場所前三役で勝ち越しなら、最低三役3場所32勝。上記パターンの前半4例(場所ごとに成績が上がっていくパターン)なら32勝でも昇進する可能性が高いが、全勝を含む32勝パターンは<8-9-15>と連続1桁となり、場所前に大関取ということにならず他の星とは次元の違う問題が起きる。

S47年以前なら連続1桁単発優勝の昇進例がある(朝潮:13勝単発3場所29勝、佐田の山:13勝単発3場所30勝、栃ノ海:14勝単発3場所32勝)一方S47年になるとS47③後の8-10-12◎の長谷川、S47⑤後の10-9-12◎を連続で見送った。直前優勝かつ3場所で2桁2場所の成績は連続1桁単発13勝と比べるとバランスが良い。にもかかわらず、見送られ、以降の昇進基準はほぼ今と同じ。(長谷川は関脇優勝経験者で唯一最高位が関脇)

多くの惜しい見送りや昇進すべき見送りがしりすぼみの後半パターンばかりなので、かなりムードに流されている感じがある。逆にこれを見送って大関昇進を考えると自動的に34勝を要求することになって、ハードルが高すぎる。直前場所1桁でもいいのなら問題ない。けれども「直前場所は絶対2桁」だけは崩されたことのない揺るぎない基準であるし、三役2場所24勝も難易度が高い。

 

(以下2019年4月12日追記)

上記に関連して、

【3役で24勝見送り】

事例 雅山

一気に大関まで駆け上がり、僅か8場所で陥落してしまった雅山。陥落後もほぼ上位総当たりの番付を維持し、何回も三役に返り咲いていた。そういう中で、

H18① 前1 8‐7

H18③ 小結 10‐5

H18⑤ 関脇 14‐1〇

この時点で大関在位中も含めて初めて三役で2場所24勝を達成。

3場所前が平幕なので、昇進は無理。でも三役で2場所24勝。明確な基準があるわけではないので、そもそもこういう事態を想定していない。前1という番付を考えると三役に準じる取り扱いでもよかったのではないかとも思う。その上H17⑪場所は上位総当たりの前4での10勝(3大関総なめ)でH18①場所、小結に上がれないという編成の不運もあった。(H18①場所に小結に上がっていても32勝なので当時の雰囲気なら見送っていたと思われる)H18⑤以前での平幕場所を含む大関昇進はすべて3場所35勝以上ということを考えると不公平感はない。(のちに昇進した照ノ富士が平幕場所を含む33勝で昇進)

H18⑦場所の事前のノルマは11勝微妙、12勝という感じだった。11勝でも3場所35勝。これで見送られたらどうにもならないというくらいのハイレベル。(貴花田の昇進時14◎‐10‐11が危うく見送られそうだった。<実際には理事長お伺いでの昇進決定で審判部単独の取り扱いでなかった点が空前絶後>)

大関の通常大関昇進は魁傑の例しかなく、これを基準にしていた可能性もあるが、魁傑の再大関昇進時の3場所はS51⑨前4 14‐1◎ S51⑪関脇 11‐4 S52①関脇 11‐4となっていて、平幕場所を含んでいるので単純比較はできない。そのうえ魁傑最初の昇進時はS49⑨関脇 7-8 S49⑪小結 12‐3◎ S50①関脇 11‐4となっていて、負け越し場所を含む昇進で異例ずくめ。負け越しを含む昇進例はS34⑨場所(3横綱1大関)後の若羽黒と魁傑(2横綱1大関)の2例のみでどちらも大関が1人しかいない状態での条件緩和と考えられる。

この場所の雅山は前半を3勝4敗。この時点でほぼ昇進ムードは消滅。上位対戦は1横綱2大関を残していた。全部勝てば昇進があったかもしれないが、10日目に横綱朝青龍に負けて5勝5敗。11日目から4連勝で千秋楽を迎えても、「勝てば昇進」というアナウンスもないまま千秋楽に勝って10勝。こうして34勝を見送るという事態に。前半負けすぎると一気に昇進ムードがしぼんでしまって、もはや星の数は関係なくなってしまうのは、ムードという点では分からない事もない。けれどもそれは星の数がギリギリの場合に考えればいい事で、純粋に客観成績を達成している成績を同列に扱うのは勝星無視で違和感がある。

H18⑦ 関脇 10‐5

プレッシャーに打ち勝って、望まれた場所で12勝以上というのが、恐らく審判部の大関昇進の基準であり理想なのだとは思いますが、それだと昇進条件を満たしていなかった場所の勝星は、いくら勝っていても勘定は2場所最大21勝ということになり、客観成績だけを見ると恐ろしく不公平に見えてしまう。