横綱昇進と見送り(8):見果てぬ夢(幻の最年少横綱貴ノ花)

【第65代】貴乃花

当時の最年少記録を横綱昇進以外は全て塗り替えた(新十両・新入幕・新三役・新大関大関3場所で通過なら、横綱昇進も最年少であった。その最初の3場所の大関成績が

H05③ 11-4〇

H05⑤ 14-1◎

H05⑦ 13-2△

直前3場所38勝、直前2場所27勝、直前実績◎+△ 3場所前に昇進した曙に対して、直前3場所は全く上、直前2場所の勝ち星は同等。ただ、直前実績だけが、わずかに連覇に対して優勝+同点。どれを見ても昇進の十分条件に該当しているにも関わらず見送り。特に直前場所の13△が巴になったので、負け方が悪いと言われ続けている。それに、巴になった相手が曙と若ノ花であり、曙が若ノ花、貴ノ花を続けて下し優勝決定。若貴対決を見たかったファンに対してもダメだった、という評価がどうしても付きまとう。でも、この成績なら昇進して当然と考えるのは、安直?? というより、3場所38勝以上で貴ノ花以上の実績を示して昇進した横綱北の富士(唯一3場所38勝以上で連覇)以外にはいない。◎+△で昇進した横綱はH05⑦の時点では、北の湖しかいないが、その北の湖にしたところで(10-13◎-13△)なので、どう考えても貴ノ花の方が上。この成績を見送ること自体がおかしい。

その後

H05⑨ 12-3〇

H05⑪ 7-8

H06① 14-1◎

H06③ 11-4

H06⑤ 14-1◎

H05⑪の負け越しが気にはなるが、成績の完璧さを否定するものではない。以前の無茶な見送り(旭富士)を帳消しにするためにもここでの昇進は必須と考えていたが、審判部アナウンスはなし。次の、

H06⑦ 11-4

で、この場所中『土俵に水を吐く』事件が起こる。が、これだけ酷い見送りをされたら誰でもそうなると思います。(11〇-14◎-13△)を見送られて、その後に(14◎-11-14◎)を見送りですから当然です。その時の彼には一切合切が不毛に見えたものだと思います。それくらい貴ノ花に対する昇進見送りは異常でした。

その後

H06⑨ 15戦全勝◎

直前3場所だと(14◎-11-15◎)で吉葉山と星の並びは同じ。実績は優勝2回。この時に協会は容認して横審に諮問します。でも、横審は… 横審、こいつらには連続優勝時には、ほぼ拒否権はないです(横審の基準が連続優勝なので、そもそも横審で審議する必要要件がない:というより連続優勝以外を判断する気概のない人が殆ど(例外はある))、が、連続優勝でない場合にはいくらでも『いちゃもん』を付けることができる。(そもそもとして、曙は連続優勝以外だと、どう考えても無理。でも昇進した。貴ノ花の時は連続優勝ではないとして見送りの判断:諮問されて見送りは空前絶後、その差は連続優勝以外にない:双羽黒を優勝なしで昇進させてしまった横審の照れ隠しw)これがまだ残っていた時代なので、こういうことになってしまった。(明らかに連覇以外は認めない、感が半端なかったです)

次の場所のH06⑪、『貴乃花』と改名して(ノを乃)場所に挑んだ貴乃花大関貴乃花としては横綱の気持ちで挑んでいた事と思います)は

H06⑪ 15戦全勝◎

完全無欠の成績で昇進。直前成績は11-15◎-15◎と完全無欠。以降3場所で41勝の大関空前絶後。(そもそも大関3場所で40勝した力士の中で大関止まりは皆無。大関で達成したのが吉葉山若乃花Ⅱ(40勝時点で昇進)、旭富士貴乃花(40勝を達成した後昇進):いずれも横綱に昇進。大関横綱にまたいで達成した横綱もいるし、横綱在位時に達成した横綱もいる:もちろん生涯達成できなかった横綱の方が多い)(最高位大関の3場所勝ち星の最多は38勝:しかも歴代大関で達成しているのはたった2人)ここら辺に大関横綱の差があるように思える。

このようにして昇進した『貴乃花』であるが、大関以下で優勝7回はいまだに並ばれてはいない。(最高位大関魁皇が5回(小結1、大関4):大関以下限定なら最多:というより小錦以前の最高位大関は優勝は2回以下。小錦以降では、千代大海魁皇栃東が優勝3回以上を記録)貴乃花大関優勝5回も最高位大関では並ぶ者はいない(琴桜大関優勝4回:ラストの連覇で昇進)

かなり異常な状態でしたが、双羽黒廃業事件からいってもまだ7年。そこまで横審に要求するのは無茶なのでしょうか?ですが、見送られた力士がどのように受け止めたかはまた別問題です。

やはり横綱昇進にはそれなりの連続性が必要と思わざるを得ない出来事でした。連続性の欠如によって11-14◎-13△が見送られてしまったのは、これまでの見送り、旭富士の14△-13〇-13△と小錦の13◎-12-13◎の見送りについて、前者は優勝がない、後者は準ずる成績が連続していないという逃げを打てたのですが、(その時点で昇進していてもなんら問題がない)貴ノ花の成績は明らかに優勝もあり準ずる成績も連続しているので、見送る理由がないので無念でなりません。

貴ノ花の見送りのレベルは今までに比べて類を見ない悪例としか言いようがないです。